
「親の介護をしていても、たまには旅行に行きたい…」「でも、離れている間が心配」
そう悩む介護者の方は多いものです。旅行中にトラブルが起きないようにするには、事前の準備が鍵です。
今回は、介護者が旅行前に整えておくべき準備について、段取りとポイントをわかりやすくご紹介します。
旅行前の介護準備は“安心”のために必要不可欠

介護者が安心して旅行に出かけるためには、「情報の整理」「代替ケアの確保」「緊急時対応の共有」という三つの柱を押さえておくことが重要です。
まず、服薬や既往歴、生活習慣などの介護情報を見える化し、誰が見ても対応できるようにしておくことで、不在中の混乱を防げます。
次に、ショートステイや訪問介護などの代替サービスを早めに手配することで、日常のケアを継続できます。
そして万が一の事態に備え、緊急連絡先や対応手順を共有しておくことも欠かせません。
これらの準備を丁寧に行うことで、介護される方も「ちゃんと考えてくれてるんだ」と安心でき、旅行そのものも心から楽しめるようになります。
不安を軽減するためには、事前の情報整理が最優先
旅行前の不安を最小限にするためには、まず“介護に必要な情報”をしっかりと整理することが不可欠です。
介護を受けている方の健康状態や服薬スケジュール、食事制限、生活習慣といった情報を一つにまとめておけば、万が一のときも代行者が冷静に対応できます。
「この薬は食後に飲ませてください」「糖分は控えめにしています」といった細かい注意点も、第三者が理解しやすいようにメモやチェックリストにしておくと安心です。
また、既往歴やかかりつけの医師・病院の情報、保険証のコピー、緊急連絡先も必須です。
ポイントは、“自分がいなくても介護が回る状態”をつくること。「自分だけが知っている情報」が多いほど、トラブルの可能性は高まります。
ですから、情報はなるべく見える化して共有しておくのがベストです。
代替介護サービスの確保がトラブル回避のカギ
旅行中に安心して過ごすためには、介護者の不在期間中のケア体制をどう確保するかが大きなポイントです。
そこで検討したいのが、「ショートステイ」や「訪問介護」などの代替介護サービスです。
ショートステイは、施設で短期間だけ介護を受けられるサービスで、食事や入浴、見守りまで一括してサポートしてくれます。
施設によっては医療体制が整っているところもあり、健康面の不安がある方には特に安心です。
一方で、住み慣れた自宅で過ごしたいという希望が強い場合は、訪問介護や見守りサービスの利用が適しています。
時間帯や回数も柔軟に設定できるため、状況に応じた選択が可能です。
「でも、どうやって探せばいいの?」と迷ったら、まずは地域包括支援センターに相談してみましょう。
本人の介護認定状況や家族の都合に合わせて、最適なサービスを提案してくれます。
大切なのは、余裕を持って早めに手配しておくこと。
希望日直前では予約が取れないこともあるため、旅行の日程が決まった段階で、すぐに調整を始めるのが安心です。
緊急時の対応手順も共有しておこう
どんなに準備を整えていても、旅行中に体調不良や転倒など予期せぬトラブルが起きる可能性はゼロではありません。
そんなときに備えて、緊急時の対応手順を明確にしておくことは、旅行前の最重要項目のひとつです。
「体調が急変したら、まずどこに電話をするのか」「かかりつけ医は誰か」「救急搬送が必要なときの流れはどうか」など、手順を具体的にリスト化し、代行者や家族と共有しておきましょう。
可能であれば、手順をA4用紙1枚にまとめておくと、いざというときすぐに確認できます。
また、介護保険証や医療保険証のコピー、薬の説明書や健康診断結果なども一緒に保管しておくと、医療機関での対応がスムーズになります。
「まさかの時に備えるなんて、ちょっと大げさかな…?」と思うかもしれません。
でも、“備えがある”というだけで介護者も代行者も安心感が段違い。
これは自分のためだけでなく、周囲を守るための準備でもあるのです。
旅行計画と並行して整える生活支援の手配

安心して旅行に出かけるためには、介護スケジュールと旅行日程の調整、そして身近な支援体制の構築が欠かせません。
まず、通院やデイサービスなど既存の介護予定を確認し、旅行と重ならないように調整を行いましょう。
日程が重なる場合は、早めのキャンセルや変更手続きが必要です。
さらに、不在中のサポート役として、ご近所や親戚と連携を取っておくと非常に心強いです。
ほんの少しの声かけや見守りだけでも、介護される方にとっては大きな安心材料になります。
周囲への共有と協力のお願いは、介護者自身の心の余裕にもつながります。
このように、旅行の計画と並行して生活支援の体制を整えておくことで、本人も周囲も安心して過ごせる環境が整います。
介護スケジュールと旅行日程のすり合わせを忘れずに
旅行の予定を立てる際は、まず介護される方の生活スケジュールを確認することが基本です。
通院日やデイサービスの利用日、訪問介護の時間帯など、普段のケアの流れを正確に把握し、それに支障が出ないよう日程を調整しましょう。
特に医療機関の受診がある週は、診察の前後に体調が崩れやすいこともあるため、旅行を別の週にずらすと安心です。
デイサービスの利用予定がある場合も、旅行期間中はキャンセルや変更手続きが必要になりますので、早めに連絡を入れておきましょう。
また、代替ケアを依頼する側にも、介護予定表や1日の流れを渡しておくことで、本人にとってもいつも通りの生活が保たれやすくなります。
たとえば、「朝食後に服薬」「15時におやつと水分補給」「18時には入浴」など、時間帯まで丁寧に伝えることがポイントです。
スムーズな引き継ぎは、旅行先での不安軽減にもつながります。
「やるべきことは全部整えた」と思える状態にすることで、気持ちよく出発できますよ。
ご近所・親戚との連携が心強いサポートに
旅行中の“いざという時”に備えて、近隣の方や親戚と事前に連携しておくことは、想像以上に大きな安心材料になります。
「何かあったらこの人に連絡してほしい」と代行者に伝えるだけでなく、近所や親族にもあらかじめ事情を話しておくと、緊急時の判断や対応がスムーズです。
たとえば、「○日から○日まで旅行に出かける予定で、介護サービスの方が来てくれます」「何か気づいたことがあれば、こちらに連絡してください」といった簡単な説明だけでも十分です。
玄関先での声かけや郵便物の確認など、ちょっとした見守りがあるだけで、本人も落ち着いて過ごしやすくなります。
特に、高齢者がひとりで留守番する状況では、“ご近所の目”が防犯や健康面での大きな支えになります。「誰かが気にかけてくれている」という安心感は、介護される方の精神的安定にもつながります。
もちろん無理のない範囲で構いませんが、「お願いできる人はできるだけ巻き込んでおく」という姿勢が、介護者自身の負担を減らし、心から旅行を楽しむためのカギになるのです。
事前の説明と信頼関係づくりが後悔を防ぐ

旅行前にしておくべき最後の大切な準備が、介護される本人への丁寧な説明と、介護スタッフとの信頼関係づくりです。
「誰がいつ来てくれて、どんなふうにお世話してくれるのか」を本人にわかりやすく伝えておくことで、不安や混乱を防ぐことができます。
また、認知症など理解が難しい方には、何度も穏やかに説明することで、安心感を積み重ねていきましょう。
さらに、普段から関わっている介護のプロと連携を取り、本人の生活リズムや好みを細かく共有しておくことで、旅行中も“いつも通り”の穏やかな暮らしを維持することが可能になります。
このような信頼のバトンをきちんと渡しておくことこそ、旅行後に「もっとこうしておけばよかった」と後悔しないための準備です。
介護される本人への説明で不安を和らげる
旅行前の準備において見落とされがちなのが、介護される本人への丁寧な説明です。
いつもそばにいる介護者が急にいなくなると、特に高齢者は不安や混乱を感じやすくなります。
そのため、「旅行に行くこと」「その間、誰がどのようにお世話をしてくれるのか」を、事前にきちんと説明しておくことが大切です。
たとえば、「○日から○日までは私が旅行に出るけど、〇〇さん(家族・介護職)が毎日来てくれるから大丈夫だよ」と、安心できる言葉で伝えるようにしましょう。
また、カレンダーに予定を書き込んだり、簡単なスケジュール表を用意するのも有効です。
認知症の方には、一度伝えただけでは理解が難しいこともあるため、繰り返し説明することや、安心できる声がけを意識することがポイントです。
「ちょっとだけ留守にするけど、すぐ戻るからね」といった短く優しいフレーズが安心感につながります。
こうしたコミュニケーションを丁寧に取ることで、介護される方の不安を和らげ、日常に近い気持ちで過ごしてもらうことができます。
それが結果的に、旅行中のトラブルを防ぐ一番の予防策にもなるのです。
プロとの連携で“いつも通り”の生活を保つ
介護者が旅行で一時的に不在になる場合でも、介護される方が日常と変わらない生活リズムを維持できるようにすることが何より大切です。
そのためには、介護のプロとの連携が不可欠です。
まず、普段から関わっているケアマネジャーや訪問介護員、デイサービス職員に旅行の予定を伝え、不在中のサポート体制をあらかじめ相談しておきましょう。
ショートステイや訪問サービスを利用する際は、介護記録や本人の好み、注意点などを細かく共有しておくとスムーズです。
また、プロの介護スタッフにとっても、「いつもの時間にお茶を飲んでいる」「この音楽が好き」「この話題に触れると落ち着く」といったちょっとした生活習慣の情報があると、より丁寧なケアが可能になります。
こうした連携が取れていれば、介護される方も“いつもの環境”に近い形で過ごせるため、不安やストレスが軽減され、体調を崩すリスクも下がります。
そして何より、介護者自身も「ちゃんと任せられる」という安心感の中で旅行を楽しむことができます。
まとめ
介護と旅行を両立させるには、事前の準備と周囲との連携が欠かせません。
情報整理やサービスの手配、本人への説明、信頼できるサポート体制──すべてが安心の土台になります。
「ちゃんと準備したから大丈夫」と思える状態が、心から旅行を楽しむための最大のカギです。